■農業系
菅野 瑞穂
(2009年度・健康スポーツ学専攻卒)
■
農業
菅野さんは、キャリアサークルのリーダーとしてばりばりシュウカツをやっていましたが、4年生になって方向転換をして、卒業後は実家で農業を始めました。
<2010.11UP>
【卒業して半年ですね。】
今
日は、高速バスで東京に来ました。東京はビルが高いですね。学生時代はこんなところに住んでいたんだなって、今思うとちょっとびっくりです。
【農業の仕事、やってみてどうですか?】
農
業って面白いですよ。全然飽きないです。自分が育てている作物はほんとに子どものようで、責任が生まれるというか「見てあげなくちゃ。」という気持ちになります。毎日野菜に向かって話していて、今では野菜がいちばんの話相手みたいな(笑)。でも野菜の気持ちがわからないとすぐだめになっちゃうんです。
「農
業と教育は似ている。」って父も言っています。例えば、暑いのにハウスを開けておかないと、植物は「暑い、暑い。」といって水を欲しがる。子どもと一緒で、植物に対してストレスを与え続けると、カビが生えたり変なところができたりするんですよ。いかにストレスなく育てるかで、作物の出来具合が全然変わってきます。
も
ともと実家は農家だから農業は知っているつもりだったのですが、実際に現場に入ってやりだすと最初は何をやればいいのか全然わからなくて、自分の未熟さを実感しました。作物の状態を良く見て、肥料はいつ与えるとか、こういう場合はこうするとか色んなことを、ひとつひとつ親に教わりながらやっています。今年1年間は学びの年です。
【どんなものを育てているの?】
主
に米と野菜、桑の実などです。4月の田植えが終わると、6〜7月には桑の実がピークになり、9月まではハウス栽培のトマトが主です。他にも家庭菜園の畑で色んな野菜を育てています。トマトがだんだん育たなくなって来る頃に稲刈りが始まり、稲刈りが終わったら脱穀、その後はハウスで大根や白菜などの秋野菜、10月くらいまで忙しく働きます。
で
もうちが一番忙しいのは12月で、お正月用のお餅セットを作っているので、毎年寝る暇もなくやっています。始めてから今年で10年になるんですけど、結構口コミで広まってきて収入源としても大きいんですよ。
【収穫物はどこで売るのですか?】
野
菜は主に道の駅に直売で出しています。他にも高速道路のサービスエリアの特産品コーナーに出したり、農協や農民連にも少し出荷しています。
う
ちが出している道の駅は、地元で作った野菜や加工品だけを並べているので、ちょっと注目されています。100人近い生産者が出していて、それぞれの商品に生産者の名前がついています。「この人のだから買っていく。」という指名買いのお客さんもいて、生産者の名前がちょっとしたブランドにもなっているんですよ。
お
餅のセットやお米は、毎年買っていただいている方に送ったりしています。野菜もその時々で収穫したものを詰め合わせて、希望する方に送っています。ブログをやっているので、それを見た人から注文をいただいたりします。この間もニチジョOGの方にお送りしました。私のブログを時々見てくれている人がいて嬉しいです。
【1日、どんな風に働いているの?】
太
陽と共に動いているので夏と冬で違いますが、夏は5時半くらいに起きて、朝ご飯の前にハウスに行き、トマトに水をあげたり収穫したりします。トマトはすぐ赤くなっちゃうので、どんどん採って出荷しないと採りきれなくなっちゃうんですよ。それから7時半までにトラックで道の駅に出荷しに行きます。
朝
ご飯を食べてちょっと休んでから、またハウスに行ってトマトの世話をします。トマトは葉っぱが多いので、実を採ったら下のほうの葉っぱは「葉っぱ掻き」と言って取らなくてはいけません。またどんどん上に延びていくので、下の方の実を採り切ったら「段下げ」と言って、トマトを吊るしているひもを緩めて下に下げます。そんなことを7ハウスぶん、汗だくになりながらやっています。
日
中は暑すぎてハウスの中に居られないので、お昼ご飯を食べてから2時くらいまでお昼寝します。午後はまたハウスに行って収穫をしたり、畑に行って他の野菜を収穫します。暗くなると、仕事は終わりです。夏は7時過ぎかな。出荷するために採れたトマトを袋詰めしなくてはいけないので、たくさん採れたときは晩ご飯のあとも働くことがあります。寝るのは、だいたい11時か12時くらいです。
【結構忙しいですね。】
で
も自分は、東京に居たときのほうがむちゃくちゃ忙しかったような気がするんです。感覚的なものなのか、ここに居ると時間の流れがゆったりしている。ずっとトマトを採っていて、ふと時計を見ると「まだこんな時間か。」と思ったりします。
だ
から逆に家で何もしていないと「何かしなくちゃ。」という気になっちゃうんです。家にいると中々ゆっくりしている気分になれないので、休みの日にはカフェに行ったり友達と会ったりしています。
【お休みは決まっている?】
野
菜はずっと成長し続けるので世話を休むわけにはいきません。野菜を1日採らなかったら、次の日は倍になって自分に跳ね返ってくるんです。なので用事があるときは、家族の人に世話を頼んで出かけます。週1回くらいは農業に時間を取られないようにしたいと思っているのですが。
【つらいと思うことはありますか?】
家
に帰って農業をやるようになって、いちばんつらかったのはプライベートな時間がなくなったことです。餅の加工場や事務所も家の隣り合わせで、ずっと家族と一緒に仕事をやっていると、自分の時間がすごく欲しくなります。
だ
から最近は、夜は意識的に部屋に籠って、自分だけの時間を過ごすようにしています。そういう時間を大切にしないと、オンとオフのメリハリがつかないで、精神的な余裕が生まれないようです。
【給料とかは決まっているのですか?】
会
社組織ではないのでちゃんとしたものではないのですが、家族協定としてお給料はもらえています。また自分自身でもどうやって収入を増やすかということを考えて、農業以外にもいろんなことをやっています。
高
校でカヌー競技をやっていたので、地元でカヌー大会があると声がかかり、その時にカヌー指導料をいただいたり、農業をテーマにしたワークショップや体験授業をやったり。地元の学生が中心になって立ち上げた地域活性化を目的にしたプロジェクトでは、学生たちと一緒に桑の実採りや、田植えなどをやりました。いつかニチジョ生ともそういうのを一緒にできたらいいなと思っています。
【ニチジョ時代のことを教えて?】
大
学時代はセパタクローをやっていました。全日本チームでプレイしていました。今もセパタクローは続けていて、試合に参加したり地元チームの指導をしたりしています。
2
年生の学園祭の時、キャリアセンターの講座を受けた学生達と一緒に、カフェのイベントをやりました。それがすごく面白かったので、その時の仲間で「スタイル」というキャリアサークルを立ち上げて活動を始めました。その頃の仲間とは今も繋がっていて、時々みんなで集まったりしています。
3
年生の秋からシュウカツを始めました。社長に会いに行くことを活動の軸として、いろんな業界の社長のお話を聞きに行きました。結果的にベンチャー企業が多くなって、あの頃はベンチャーでバリバリ働くことにあこがれていました。
「ス
タイル」のリーダーをやっていたこともあって、他大のキャリアサークルの代表やキャリア意識の高い学生に会ったり、「逆求人」を売りにしているシュウカツイベントにブースを出して、自分の活動をアピールしたりもしました。
そ
んなことをやりながらも、「いったい自分は何をやりたいんだろう?」とずっと考えていました。面接も人材サービスやコンサル系を中心に20社くらい受けていましたが、結果的に内定まで至った会社はありませんでした。3年生の終わりに、一回自分を「リセット」しました。
春
休みに10日間くらい一人旅に出ました。中国地方や九州などを回り、いろんな人に会って、いろんな話を聞きました。で、そこで始めて農業というのが自分の頭の中に浮かんできたんです。家は農業をやっていて、子どもの頃は自然の中で日が暮れるまで泥んこになって遊び回っていました。
4
年生になって、農業のことを色々調べるようになりました。「農家レストラン」というものがあると知り、それに興味を持ち、自分もそんな人が集まれる環境を作ってみたいと思いました。そこでセミナーを開いたり、色んな活動をやったら面白いんじゃないかと。だんだん、自分の目標はそこだと確信を持つようになりました。
実
現するにはどうすればいいのか真剣に考え始めました。農業関係の会社に入ることも考えましたが、まずは現場を学ばないと何もできない。実際に土に触れて作物を育ててみるしかない。家に戻ることを親に言ったのは卒業間際の1月でした。電話で言いました。親は嬉しかったのかなと思います。
【農家レストランの夢は続いていますか?】
は
い。まずは自分の土台として3年はしっかり現場を学ぼうと思っています。今は、色んな農家レストランや観光農園、オーガニックカフェなどを見て回っています。農家レストランは、交通が不便でもおいしければお客さんが集まってくるようです。自分は野菜や果物などの収穫体験ができて、宿泊や食事もできるようなものをイメージしています。
早
く自分で経営をやってみたいと思いますが、その前に一旦企業で働いてみるのもいいかなと思っています。方向性さえあっていれば別に農業じゃなくてもいいんです。全てのことが農業につながると思うし、組織や経営に関することを学べると思うので。
で
も農業をやり始めたら、他にもやりたいことがたくさん出てきました。今は来年をにらんでこうしようというのを色々考えています。
【例えばどんなこと?】
個
人的には山羊を飼いたいんです。チーズも作れるし、草刈りもしてもらえます。親にずっと言っていて、最近やっと許可をもらえたのでこれは実行できそうです。あとヨーロッパ系の農業も見に行きたくて、手始めに1月にニュージーランドに行ってこようと思います。
農
業をもっとおしゃれなイメージにするとか、その人ならではのブランドを作り出せれば強いんですよね。今、色々見て回って勉強していますが、やっぱり売れているものは特徴があるものだと思います。自分のイメージするものに近づいていくにはどうすればいいかを考えるのは面白いですね。
都
会から人がくると、自分たちは当たり前だと思って生活していたことに驚かれたりすることがあります。家に土間があったり、風呂を薪でわかしていたり、星がきれいだったり。そういうことを逆に自分達が気づかせてもらえる。
【農業は大規模化しなくてはと言われているけど、どう思いますか?】
大
規模にして機械を導入して効率良く生産するという発想ですよね。問題は販売で、作った分をどう売るかだと思います。取引先とかそういうものがバックにないと、いくら生産しても買ってもらえませんから。自分は今は自分のできる範囲でやっていきながら、将来的には会社にすることも考えていきたいです。会社にして成功しているところはたくさんあるみたいです。
【ネット販売に関しては?】
ネ
ット販売はまだやっていませんが、消費者と直接つながれる関係がいいですね。うちでもリピーターというか、毎年買ってくれる人は大事にしていきたいと思っています。ただ個人農家がネット販売で利益を出していくのはけっこう難しいと思います。
今
、個人のお客様から来る注文は、2000円とか1500円とかなので、一箱ごとに野菜を詰め合わてチェックしながらやっていると、手間はかかる割に売り上げは少ないんです。それがまとめて10セット、20セットってなればもっと効率的になるので、売れ筋の商品をドーンと載せて、ある程度の量を売る必要があると思います。
利
益という点では、加工品をやるのが重要なんじゃないかな。加工して付加価値を付けて売るのがいいと思います。ほんとはうちも、瓶詰めなどの加工品をもっと増やしたいんですが、機械を取りそろえるだけでも結構お金がかかるんですよ。今のところ、餅以外の加工品は外に頼んでいます。トマトを工場に送ってそれをトマトカレーに加工してもらったり。
【ところで今、山や畑が荒れているそうですね?】
そ
う。山が荒れると、野生の動物がすごく出てくるんですよ。この間も庭に狸がいてびっくりしました。山を荒らしておくことによって、動物がどんどん民家のほうに進入してくる。イノシシも出てきて畑を荒らしているし、今年は「マミ」という動物(日本アナグマ)にトウモロコシを全部食べられちゃってショックでした。
畑
が荒れているので、もう一度、一から開墾して土作りから始めるようなこともやってみたいです。そういうのも、大学生達と一緒にプロジェクトでやれたら面白いと思う。人を泊められて畑もできるような場所を作って、子ども達を集めてワークショップとかをできたらいいな。「よし、やるぞ!」っていう感じの学生が何人か出てきたら一緒にやってみたいです。
【最後に農業を始めてみたいという人へのメッセージを。】
私
の場合は家が農家でしたが、新規就農をする場合は、自治体のなどの支援体制がしっかりしているところがいいと思います。まずは農業株式会社みたいなところで現場を学ぶというのも手ですね。
最
初はやはり誰かに学ばないと。何も知らずに始めると、肥料もわからない、水くれもわからないから枯れますよ。私も今だに「なんでこうなるんだろう?」って不思議に思うことがいっぱいあります。同じように肥料をやって、同じように水をやっていても、隣同士で作物の状態が違ったりするんです。
「野
菜は人の足音で育つ。」と言います。結局どれだけ愛情を持って見てあげるかだと思います。
<2010.9収録>